高齢や不調のニワトリを寒い冬季に保温飼育する“段ボールハウス”

ニワトリの寿命は、長い子でも10年ほどです。人間の一生と比べると1/10の密度ですね。人にとって10年に1度の大怪我や大病も、鶏には毎年の出来事です。4歳や5歳の中年以降になったら、人間の中高年と同じくどうしても不調が多くなります。そして、年をとったニワトリさんや体調を悪くしたコッコを、寒さから守らなければなりません。暖かく保温するには、簡単に作れて屋内に持ち込める“ダンボールハウス”が適しています。軽くて持ち運びに便利なうえ、不要になれば“燃えるゴミ”に出せます。

ニワトリは5歳を過ぎたら“お年寄り”と考えていいです。若くて健康なニワトリと違い、冬季の飼育環境に配慮が必要になります。人間の若者とお年寄りが違うのと同じですね。そして、若くても体調不良のニワトリは、屋内で保温するなどの配慮が必要になるでしょう。お年寄りでも健康で元気なニワトリもいます。食欲があって元気に歩き回っているのなら、ダンボールハウスの必要はありません。ただし、元気な場合でもお年寄りコッコの不調に対処できるよう注意深く見守って下さい。急に具合が悪くなるのは、人間のお年寄りに限らずコッコも同じです。

病気のニワトリさんは、気温の変化に注意しましょう。体調不良で弱っているのなら、若くても寒さに要注意です。食事量が十分でない場合、栄養が足らずに体温を十分にあげられません。獣医さんから「季節に関係なく、病気で座り込んだ時は室温30度くらいで保温しましょう」と指示された事があります。病気のニワトリさんも段ボールハウスで暖かく保温してあげましょう。私が成鶏の冬季飼育(屋内療養)に使った段ボールハウスを本ページで紹介します。


YouTube動画“寒さに寝込んだ雌鶏〜お婆さんを屋内段ボールハウスで保温〜”
次のURLです:https://youtu.be/CGDUky4pvyM
7歳半のお婆ちゃん鶏を段ボールハウスで屋内飼育した時の映像


YouTube動画“鶏の段ボールハウス解体〜保温器具を片付けて保管〜”
次のURLです:https://youtu.be/GSqpN5TjEEg
解体した時の映像が段ボールハウスの構造の参考になるはず(逆の手順で製作できる)

鶏の段ボールハウス
(名古屋コーチンの成鶏1羽を保温して療養させる“段ボールハウス”の見取り図)
段ボールハウスを晴天に干す
(天気の良い日に干した段ボールハウス、暖気を逃さない隙間テープで目張りを施した)

鶏を保温・屋内飼育する“段ボールハウス”の概要

上記の見取り図と写真からダンボールハウスの概要が分かると思います。冒頭に掲載した動画を見て頂くと、より分かりやすいでしょう。我が家のニワトリ、名古屋コーチンのために製作したダンボールハウスの寸法は、62cm×47cm×高さ71cm(外寸)です。成鶏1羽が窮屈過ぎずに動ける大きさですよ。ほかの種類の鶏よりも体格が大きめな名古屋コーチン(雄鶏の体重が5Kg弱、雌鶏の体重は4Kg)だから、保温飼育に大きな段ボール箱が必要でした。窮屈なら大問題ですが、大きい分には“大きいだけ良い”です。体格が小さなニワトリにもこのサイズを参考に段ボールハウスを用意してあげるといいでしょう。ひと冬、3ヶ月間や4ヶ月間の使用を想定して頑丈な2重の段ボール箱を採用しました。分厚い2重の段ボール箱は、型崩れしにくい頑丈さのほか、断熱性に優れる利点があります。保温器具の消費電力を抑えられ、より小さな保温器具で内部をポカポカに暖められるでしょう。

1.十分に大きく頑丈なダンボール箱を使う(二重構造のものが良い)
2.ダンボール箱のフタ部分を立てて高くする
3.ダンボールハウスの上部(フタの部分)を園芸用支柱で補強する
4.百均などで購入できる“ワイヤーネット”で天井を作る
5.天井の半分に厚さ1mmくらいのビニールシートを被せる(明かり取り&暖気漏れ対策)
6.天井のビニールシートのない部分に新聞紙や布を掛けて暖気漏れを防ぐ
7.段ボールハウスに保温器具を取り付ける(40Wや60Wが安全)
8.保温ヒーターが底面新聞紙や側面に接しないように太めの園芸用支柱で吊るす
9.天井部分と開口部(ビニールシート開閉部)に隙間シートを貼って暖気漏れを防ぐ
10.段ボールハウスの底にビニールシートを敷いて湿気対策をする
11.底に敷いたビニールシートのうえに新聞紙を敷いて糞対策をする
12.天気の良い日に段ボールハウスを虫干しする
13.前面開口部のほか、段ボールを切り抜いて透明の下敷きなどで“窓”を作ると良い
14.暖かい屋内に段ボールハウスを置けば、より小さなワット数の保温器具で済む

ダンボール箱
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段ボールハウスの天井と前面はビニールシート
(段ボールハウスの天井と前面は、開閉できるビニールシートの垂れ幕で覆った)
段ボールハウスに窓を作る
(ビニールシート部分のほかに、陽のあたる場所に窓を1ヶ所作ると内部が明るくなる)
段ボールハウスの底にウンチ対策の新聞紙
(底面の湿気対策ビニールシートのうえに、ウンチをしてもいいように新聞紙を敷く)
段ボールハウスの天井に暖気を逃さない新聞紙
(天井のネットだけの部分には、暖気を逃さないように新聞紙で覆う)

ダンボールハウスの工夫

内部が真っ暗だと、ニワトリさんの気分も塞いでしまいます。年をとったり体調不良のコッコが1日ずっと入っている段ボールハウスだから、昼間に明るくなるように配慮しましょう。明るくなりすぎないよう、上記写真のように、天井の半分と前面の一部にビニールシートで覆うといいでしょう。私は、天井に載せるネットに針金で縛って連結させた、厚さ1mmのビニールシートを垂れ幕代わりに使いました(写真参考)。ビニールシートをめくりあげて、飼料の交換などをします。昼間、気温上昇して暑くなったなら、保温器具の電源を切ってからビニールシートを開閉して温度調節するといいです。

天井と前面開口部のビニールシート部のほか、明かり取りの窓を1つ作ると良いかも知れません。段ボールの陽が射す場所を切り抜いて、透明な下敷きやクリアファイルをガムテープで貼り付けると良いでしょう(写真)。体調不良の鶏さんが入居するダンボールハウスです。同じように、病気で寝込んだ人間が「ちょうど良い」と感じるカーテン越しくらいの明るさになると良いかも知れません。なお、昼間はそこそこ明るくなってもいいですが、日没後に暗くなるように配慮して下さい。屋内照明が射し込まないよう、夜間には遮光できるもので段ボールハウスを覆いましょう。

湿気に弱いダンボールは、こぼれた水や下痢便にフニャフニャになってしまいます。1ヵ月単位の長期間、鶏飼育に使うのなら“湿気対策”が必須ですね。段ボールハウスの底にビニールシートを敷きましょう。垂れ幕代わりに天井と前面を覆ったビニールシートと同じものでいいです。ちなみに、ホームセンターのテーブルクロス売り場で透明なビニールシートが販売されているはず。私もテーブルクロス用に販売されている透明シートを購入して使いました。幅45cmや90cmのほか、幅60cmが販売されていて、内寸60cmの段ボールハウスにちょうどピッタリでしたよ。ダンボールハウス内寸幅が45cmだから、長さ45cmを2枚購入して天井と底に使いました。

底面に湿気対策のビニールシートを敷いても、毎日の“ウンチ清掃”は面倒なものです(笑)。使い捨ててもいい新聞紙をビニールシートのうえに敷きましょう。1日毎にウンチと新聞紙を一緒に丸めて捨てれば楽ちんです。清掃の際、天気が良ければ数日に1度の割合でダンボールハウスを虫干しするといいです。ビニールシートのお陰で、直接湿気は伝わりませんが、蒸発した湿気が籠ってしまいます。そして、ウンチの臭いもキツくなってきますよ(笑)。強い陽射しに干せば、嫌な臭いも消えるはずです。不調の鶏さんは、「家がホカホカになって気持ちいいな〜」と気分が良くなることでしょう。

静養ケージと段ボールハウスを比較
(火事防止に、保温ヒーターを念のため新聞紙や段ボールに接しないようにする)
静養ケージは通気性と明るさも良い
(気温1桁台の冬季、40Wヒーターだと出力不足で20度弱が限界ですが高齢コッコには十分)

保温器具と温度設定

60cmサイズの段ボールハウスを冬季に25度に保つには、40Wや60Wの保温ヒーターでは心許ないかも知れません。対策として、上部と前面の開口部に“隙間テープ”を貼り、暖気の漏れを防ぎましょう。スポンジ状の隙間テープは、垂れ幕のビニールシートや上部に被せた新聞紙と段ボールとの隙間を減らしてくれるはず。保温ヒーターをむき出しの電球の状態で使用すると、鶏が火傷をしたり、ヒーターに触れた新聞紙から出火して大変危険です。安全カバーを装着したものを必ず使いましょう。

なお、鶏を含むペットの保温飼育には、“保温ヒーター”と“温度調節器”(サーモスタット)の2つを揃えます。保温ヒーターの電源を温度調節器が管理しますよ。温度センサーの場所が設定温度に達したらヒーターの電源が切られる仕組みです。設定温度より温度センサーの場所が下がったなら、再びヒーター電源が入れられます。そして、温度調節器の温度設定ダイヤルは、誤差があるかも知れません。温度校正(誤差の確認)のため、段ボールハウス内に気温計を入れて実際の温度を測るといいでしょう。温度センサーと保温ヒーターの間は、設定温度よりも高温になります(ヒヨコ飼育方法ページにイメージ図あり)。そして、暖気は上昇する性質がありますから、底よりも上部が高温になりますよ。写真のような配置にすると、段ボールハウスの床で眠るニワトリさん付近が設定温度くらいになると思っています。

高齢の鶏は、病気ではありませんから食欲もそれなりにあるはずです。外気温よりも幾らか高い気温に保てれば良いでしょう。段ボールハウス内を20度くらいにできれば、自前の羽毛で問題なく冬季を乗り越えられると思いますよ。5月や10月頃の急な冷え込みに不調になったのなら、外気温より5度〜10度くらい高く保温して様子をみるといいかも知れません。食欲さえ戻れば一安心です。その設定温度で様子をみましょう。

問題は、食欲をなくしてあまり食べられない病気のニワトリさんです。獣医師がいうように、冬季に30度くらいに暖めるには、相当の出力(ワット数)が必要になるでしょう。60Wの保温ヒーターでは足らずに、100Wヒーターが必要になるかも知れません。100Wの保温ヒーターを使った経験がありますが、とても熱くなります。被せた安全カバーが火傷するほどに熱せられ、新聞紙が接触すると火事になり兼ねないと感じました。隙間テープの暖気漏れ対策、段ボールハウスを暖かい屋内に置くこと、断熱性の優れた2重の段ボール箱を採用することで、なるべく40Wや60Wの保温ヒーターで済むように工夫するのが安全だと思います。40Wなら問題ありませんが、どうしても100Wの保温ヒーターを使用する場合には、安全カバーを被せても写真のように段ボールや新聞紙に接しないように注意して下さい。念のため、60Wや40Wヒーターの場合でも接触しないようにするといいでしょう。

ところで、保温は大事ですが暑すぎてもダメです。30度という数字が出てきましたが、熱中症ギリギリの飼育温度ですよ。ニワトリさんが暑がっている素振りを見せたなら、すぐに設定温度を下げましょう。熱中症の予兆(素振り)は、下記リンク先ページで詳細に解説をしています(動画あり)。「ハァハァ」と口呼吸をしているようだと暑すぎますので、温度を下げてください。

夏季・鶏の熱中症サイン【予兆や症状】

段ボールハウスを再利用のために畳んだ
(頑丈な2重のダンボールを利用したハウスを、次に再利用するために畳んだ写真)
段ボールの寸法
(私は、外寸62cm×47cm×48cmの二重の段ボール箱を利用しました)
段ボールハウスの底に敷くビニールシート
(湿気対策に底に敷いた厚さ1mmのビニールシート)
蘭支柱を使って段ボールを補強
(段ボールハウス上部や前部の開口部を補強する骨組みに利用した“蘭支柱”)
蘭支柱をガムテープでしっかりと固定
(段ボール箱がヨレヨレにならないよう、骨組みをガムテープでしっかりと固定して補強)

段ボールハウスの補強、その他

冬季に3ヶ月や4ヶ月間の“長期の屋内飼育”を想定しました。長期間の使用なら、段ボールがヨレヨレにならないように太い針金で開口部を補強しましょう。私が使ったのは、園芸用の“ランの支柱”です。細い針金は補強にならず、太いと高価なうえ扱いが大変ですね(輪になっていて10m単位の販売)。長さ90cmなどで販売される、太さ3mmや4mmの洋蘭の支柱がちょうどいいでしょう。上記写真や絵のように、段ボールハウス前面と上部にガムテープでしっかり貼り付けて補強します。上部には、長さ90cmの洋蘭支柱2本と半分くらいに切断した1本を使って、“口の字”型に加工した骨組みで補強をしました。3本を細い針金でグルグル巻きにして継ぎ足し、口の字型にします。段ボールの内寸(60cm×45cm)より少し小さめの53cm×45cmくらいの四角形に骨組みを作るといいでしょう。ちなみに、この骨組みが上部に載せるネット(金網)を支えます。

段ボールや新聞紙に接触しないように、私は保温ヒーターを園芸用支柱で吊り下げました。洋蘭支柱よりも太い普通の園芸用です。太さ1cmくらいの支柱なら、ヒーターの重みで垂れ下がらないでしょう。段ボールに支柱を通す穴を開けて通します。外と中からガムテープで支柱と段ボールをしっかりと固定しましょう(冒頭の見取り図)。支柱をしっかりと支えられる分厚くて頑丈な2重の段ボール箱は、この作業にも心強いですね。

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【寒さ対策】若くて健康な冬季のニワトリは、戸締りすれば大丈夫

若くて元気なニワトリなら、冬季の屋外飼育もできます。東京近郊の寒さなら、夜間、鶏小屋に冷たい風が吹きこまない対策をしましょう。鶏小屋に開閉できる“雨戸”を装備すると良いです。南関東にある“こーちんの庭”のニワトリ達の冬季の様子を解説します。

冬季のニワトリ、鶏小屋の寒さ対策

【雪対策】若くて健康な冬季のニワトリは、“雪宿り”する

若くて元気なニワトリなら、冬季の屋外飼育もできます。東京近郊に降る数cmの積雪なら問題ないでしょう。雨天に雨宿りするのと同じ場所で“雪宿り”させれば良いです。南関東にある“こーちんの庭”の積雪とニワトリ達の様子を解説します。

冬季のニワトリ飼育、積雪対策

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